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唐澤さんは洋裁の学校を経て、興味のあったインテリア関係の会社に就職したが会社員は性に合わないと感じ4年程で退職した。その時に持ち合わせていたスキルといえば洋裁であり、その技術を生かして町の手芸用品店で購入できる生地とミシンがあればできる何かをつくりだした。 その時に手に入る生地と室内で使えるものという発想から、エプロンやランチョンマット、クッションカバーなどを作った。実際に作ったものは周囲の人たちからの評判もよく、やがて知人のお店で販売するようになり、そこでの評判も上々であった。自分が作ったものが売れること自体に感動を覚えつつ、さらに違うかたちのものをいろいろ作ることで品数が増えていく。そして収入を補うためにアルバイトもしながら、製品を作り小売店に卸すという形態で生計を立てるようになった。
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そんな生活をしていあたある日、現在のパラフィン加工の帆布でつくるバッグが生まれるきっかけになる出来事が起こる。高速道路を走行中の出来事であった。同じ道路上を、軍のトラックが走行していた。そのトラックの色あせた幌は高速で走るトラックの荷台でバタバタ、バタバタと揺れていた。過酷な環境でも耐えうる強度をもっているが故に、長い間使われることで色あせたり、表情が変わっていく幌。そして衝撃的に幌に出会ってしまった唐澤さんはその素材に強く惹かれた。この丈夫な生地で何かを作ったらどんな"かたち"ができるのだろうか、と。そして早速トラックの幌を探し求め、業務用の資材として取り扱われている帆布を見つけることができた。トラックの荷台などで馴染みのある深いグリーンの生地と作業用小物入れなどで使われるビビッドなオレンジ色の生地があった。グリーンの生地を選び、その丈夫な素材からイメージしたのが郵便屋さんが使うショルダーバッグのようなかたちだったり、スーパーで使われていた茶の紙袋に持ち手をつけたようなかたちなどであった。それまでの柔らかい生地でできるものとはまったく異なる、硬い素材だからできるかたち。
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[上:左]幌の素材そのもので作られる丸底のトート(シリンダーバック)。幌の素材でバックをつくるようになってからずっとあるもの。 [上:右]メッセンジャーバッグをイメージした短いショルダーのバッグ(デリバリーバッグ)。幌から考えられたかたち。 [下:左]ハギレで作ったコースター。柿渋染めの帆布。 |
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そして丈夫な帆布という素材で定番の丸底のトートやショルダーバッグをはじめとするバッグ作りがはじまった。ひたすらミシンで製造して卸による販売を続ける。やがて資材としての帆布だけではなく、オリジナルのカラーの帆布(パラフィン加工したもの)を織ることができるようになり、製品としてのかたちや色のバリエーションも増えていき、いつの間にかバッグ作りを生業とし、また周囲からもそう認知されるようになっていた。そして自分が作るバッグを見てもらうための空間として2001年にアトリエ兼用の店舗を初めてOPENし、2003年には現在のマンションの一室へ移転することとなる。2003年頃は唐澤さんをはじめとするスタッフによる製造が製品の半数を占めており、バッグ作り以外の時間がほとんどないような生活が続いた。その後は徐々に工場生産へ切り替えて、現在はプライベートな時間を持つことができるようになっているそうだ。それは新しいかたちを考える時間になったり、新しい何かにつながる時間になったりしている。
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『ateliers PENELOPE』の製品はオリジナルで染められた帆布で作られるものと、年2回のシーズン毎に別注する先染めの布で作られるものとがある。後者は「Limited」と言い、別注した布を使い切ってしまうと製造が終了となってしまう。一方、帆布の製品は唐澤さんが高速道路で出会って以来、様々なかたちが生み出されたり、変化しながら、その素材がなくなることなく現在に至っている。『ateliers PENELOPE』のバッグは単純に"帆布"のバッグではなく、トラックの荷台でバタバタなびいていた丈夫な"幌"のバッグであり、唐澤さんがそれに出会ったから生まれ得たもの。だから『ateliers PENELOPE』では定番の帆布で作られる様々なかたちを長く楽しめ、シーズン毎の「Limited」な素材で気分を変えて楽しめるのである。
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[上:左]資材としてのグリーンの幌からはじまり、現在はこれだけのバリエーションの帆布をオリジナルで織ることができるようになった。 [上:右]昨シーズンに「Limited」として作り好評であった麻のトートバッグ。復刻するかもしれない? [下:右]2006/春の「Limited」の1つで2トーンに先染めされた生地と革のストラップのバッグ(エテバッグ)。
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唐澤さんは持って生まれた少しばかりのセンスの良さと、洋裁という学んで身に着けたスキルと、とにかくやってみるという前向きな姿勢から、ミシンと布によるもの作りをはじめて以来、その時々にできることを地道にコツコツ積み上げていくことで、やがてバッグというかたちをつくるようになり現在に至っている。
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そして唐澤さんがものを作る時に意識の中にあるのは、それが日常的で気取りのないものであること、である。そしてそこに楽しさを加えるための表現として"色遊び"と有機的なかたちのもつ存在感がある。それは果物や野菜や料理といった天然の彩りやインテリアの中の配色などから発想する自然な色合いであったり、人の手が介在することでしか生まれ得ないあたたかみのあるかたちであったり。つまり生活の中で必要なかたちに、生活の中にある楽しさや人の手によるあたたかさを加えることで生まれてくるものを作っている。また、作り手自身が"楽しむ"という意識をもって初めて人を楽しませることができるはずであり、それが今この仕事を続ける意味でもあると感じている。
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今後、幌のように衝撃的に新しい素材に出会ったり、新しい発見や刺激から全く違うものを作ることになるかもしれないし、全く違うことをはじめるかもしれない。例えば「Limited」は、幌以降の新しい何かになる試みの一つかもしれない。しっかりとした取引先や顧客がいる今、バッグ作りが中心であることは変わらないであろうし、ものを作る姿勢も変わらないであろう。その中でこれまで同様、小さな目標を一つ一つクリアしながら次のチャレンジをしていく。睡眠時間を削ってバッグを作っていた頃より少しだけゆとりのある今、唐澤さんはもっと大きな何かを探っている。そんな何かの途中にある『ateliers PENELOPE』は、マンションの入口から管理人室の前を通り抜けた1階左奥に位置する。辿り着くまでに少々勇気がいりますがお気軽にお越しください、とのことです。
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- July 2006 -
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