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独特のかたちの家具を作る職人でありチェリストでもある三木黄太氏は川崎市馬絹にあるショップ兼工房の『アートファニチャーギャラリー』で日々家具を作り出している。
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三木黄太氏は祖父が彫刻家、父は劇人形作家という環境で育った。大学時代に結成したバンド活動を卒業後も続ける傍ら、サザビーズファニチャーでアンティークパイン家具の修理の仕事を始め、そこから木工との関わりが始まった。そしてしっかりとした技術を学ぶために、その仕事をしながら東京都立大田高等職業技術学校に1年間通い、鋳造木型と木工の技術を習得した。その後Y's for Living などの家具デザインを手がけるサンプル工房を経て、あらためて何の制約もない自由な家具作りをしたいという欲求を強く感じて独立を決意することとなる。まずサザビーズファニチャーの頃から共に働いていた真鍋幸照氏が主宰する『アーティチョークアーツアンドクラフトスタジオ』に参加し、パイン家具の製作や古い家具のリプロダクションを行なっていた。そこでは自由な家具作りはできたが、今度はパイン家具や古い家具をまねて作った家具がはたして自分の作品と言えるのか、とオリジナルの家具作りへの思いを募らせることとなった。そしていよいよ1991年2月にオリジナルの家具を作るために『アートファニチャーギャラリー』をオープンした。
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三木氏は誰も作っていないような家具作りをしようと、無垢材を使って無垢材でしかできないかたちを考えた。そして考えだしたのが無垢材の角を削り込むデザインであった。当時多く生産されていた中が空洞のフラッシュ家具では実現し得ないかたちであり、結果的に自分自身がとにかく惚れ込んでしまうようなどこにもないデザインとなった。箱物家具の淵であったり、机の天板や椅子の台座の淵や脚などの部分が柔らかい一見不規則な曲線が重なったような独特の模様に削り込まれている。
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そして実家の家具を第1作目として、三木氏はオリジナルの家具を作り始める。その後はオーダーされた様々な家具を(アート・ファニチャー・ギャラリーHP「カタログ・ギャラリー」)、その人の生活の中で使われるものを作ることを励みにしながら作り続けた。そして数多く作っている過程において自然と合理性を追求していた結果、三木氏の作る家具にはある種の統一感が生まれてきた。例えば椅子の脚を何十本、何百本も作り続けていると、三木氏の家具の特徴であるフリーハンドでの削り込みがいずれも同じようなかたちになってくる。そして三木氏はそれが自分自身の"身体性"であると考える。使い手や作っているものへの思いや作り手の息遣いであったり、作り手の個性が作っているかたちに表れてくる、ということであろう。そして自身は"粗野な感じ"と表現する三木氏が作る家具を使う人は"あたたかさ"や"ぬくもり"と感じるのかもしれない。つまり三木氏の家具に対する思いや自身の"身体性"が表れたかたちがアートファニチャーギャラリーの家具の特徴なのである。
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[上:左]猫椅子の脚。フリーハンドで削っているが、みんなほぼ同じかたちに仕上がっている。三木氏のいう身体性の表れ。 [上:右]猫椅子。当初は捨てるのがもったいないと、はぎれで作っていたが、評判がよく現在は猫椅子用に材料を仕入れて作っている。 [下:左]アルミの砂型鋳造の金物のコートハンガー。その他にもアートファニチャーギャラリーのWEBサイトの「カタログ・ギャラリー」にて三木氏の手がけた家具を見ることができる。 |
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アートファニチャーギャラリーでは家具作り以外に木工に関わるいくつかのユニークな提案をしている。1つはドイツの家具マイスターのクレメンス・ゲルステンベルガー氏との交流をきっかけに2004年に始めた「ドイツ木工研修留学講座」である。これはゲルステンベルガー氏との交流を生かして木工の職人を目指す人にドイツの家具マイスターの下での修行の場を提供することを目的にして開講されたものである。これまでに4名の方がゲルステンベルガー氏の元に留学し、日本の職業訓練所や専門学校などでは学べないようなものを身につけて帰ってくる。もちろんドイツでマイスターになる可能性も無くは無い。帰国後はそれぞれ木工に関わる職に就き、それぞれの目的に向かって励み、三木氏にとってもよい刺激になっている。そしてもう1つはレンタル工房である。広い工房と道具を貸し出すというもの。三木氏による道具の使い方の指導とセットになったコースもあり、木工のエキスパートでなくても気軽に利用できる。そしてその他にも三木氏がチェロ奏者としてコツコツ、パスカルズという2つのバンドに参加し、家具作り以外にも国内や海外でミュージシャンとしての活動をしているのもユニークである。三木氏にとっては家具作りもチェロの演奏も、自身の"身体性"が表れる点に魅力を感じているのだろうか。
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三木氏がオリジナルの家具作りをはじめて15年が経過した。削り込み具合は作り始めた頃に比べ多少変化してきた
ものの、そのデザインは普遍的である。それは何かを追求してきた結果、三木氏の身体性の表れとして形作られてきたもの。今はスタートの頃と変わらず三木氏が作る家具を求める人のために思いを込めて作っている。行き着く先は三木氏自身もわからないが、求められる限りオリジナルの家具を作り続ける。
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- August 2006 -
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